生贄姫は隣国の死神王子と送る平穏な毎日を所望する
「うちには”亜種”の生け捕りと調査依頼がかかっています。夢魔の生け捕りはそれだけでも骨が折れる。そのうえ、夢魔を解析して子どもの行方も負わなくてはならない」

 まぁ実際子どもの調査は第一騎士団全体が行いますが、とサーシャは付け加える。

「そのうえすでに精神被害が出ている人の解呪。これが地味に多いうえに面倒。魔導師って基本的に攻撃特化で一気に片づけるのは得意でもちまちました工程の多い魔法は面倒なのよね。解呪より呪術かける方が得意だし」

 肩をすくめてエミリアはため息交じりにそう話す。
 精神攻撃の被害者が他者に危害を加えないよう抑えたり、治安維持のための見回り等周辺対応は第三騎士団が担うことになっている。

「不得意分野取り組むの、演習やる目的。ガンバ。でもうちの魔導師20名。正直キャパオーバー。バタついてる理由」

 応接室は人払いをしているので静かだが、ここに来るまでに研究所内が随分と騒がしかったなとリーリエは思いだす。
 つまり過重労働真っ最中だったらしい。

「亜種と通常個体ってどう見分けるのですか?」

「毛色が違うんすよ。つっても、夜だと見分けづらいから、近づくほかないんですけどね。んで、亜種は殺すなと」

 リーリエの問いにゼノが答える。

「夢魔の攻撃範囲外からの遠距離攻撃できない以上、悪夢解除または状態ブロック必須。うち、人員割く余裕ない。マジ無理ゲー」

 フィオナがつまらなさそうにスプーンで空にくるくる円を描く。

「ルーくん、面倒事しか持ってこない。フィー泣きそう」

 そういってえんえんと適当に泣きまねをして見せるフィオナ。
 亜種の生け捕り、情報解析、精神被害者の 解呪、団員の精神攻撃対策を20名でやれと?
 ルイスの無茶ぶりはここでも健在らしい。

「魔術省の宮廷魔術師貸出……はないのですね」

 宮廷魔術師の単語が出ただけでエミリアとサーシャの眉間に青筋が浮かぶ。

「あの軟弱どもが現場で何かできると思いか?」

「所属違いの魔術師など、邪魔なだけです」

「うちと魔術省、常に冷戦勃発中」

 聞くまでもなかったとリーリエは肩をすくめた。
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