クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
「そう。優姫の言う通り、俺はめちゃくちゃ心が狭いんだよ」

 抗議する前に、彼から強めの声が飛ぶ。足をばたつかせても意味はなく、向かうのは寝室じゃない。幹弥がなにをするつもりなのかまったく予測できずにいると、私は目を疑った。

 連れてこられたのはまさかのバスルームで、どちらも服を着たままなのに幹弥は躊躇うことなく足を進める。このマンションに来たことは何度もあったけれど、使ったことはないから、見るのは初めてだ。

 タイル張りでバスタブも広く、どこかのホテルみたい。

 やっと下ろされてホッとする暇もなく、ややぬるめのお湯がシャワーヘッドから勢いよく降り注いで、私の髪と服を濡らした。

 驚きで目を閉じて下を向く。水分を含んだ衣服はみるみるうちに重くなり、肌に張りついた。

「本当、いつも人の神経を逆なでする」

 シャワーの音に混じって彼の声はしっかりと耳に届いた。刺さるような痛みを覚え、声を震わせながらも虚勢を張る。

「だからって、こんな嫌がらせしなくても……」

「あっさりとほかの男の匂いなんてつけるな」

 言われたのと同時に強く抱きしめられた。幹弥がどんな顔をしているのか私からは見えない。でも、さっきまでの怒っている感じはなく、私の濡れた髪を大事そうに撫でる。

 幹弥だって、彼女の香水の匂いをつけてるくせに。私にはない甘い香りを漂わせて。なんでいつも、自分はよくて私はだめなの?

 文句を言ってやりたいのに、声にならない。シャワーはどちらかといえば、私より彼の方にかかって、幹弥もびしょ濡れだ。馬鹿みたい。
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