クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
「本もこんなに借りなくていい。たかがレポートだろ。この本のはじめから三章まで読めば十分だよ」

 そう言って何冊かあるうちの一冊が彼から手渡され、私は慌てて受け取る。まだ読んでいなかった本だけど、パラパラとページをめくると、読みやすい文章でよくまとめられている印象だ。

 あっさりと解決の糸口を提示され、数日前から手を焼いていたのが嘘のように思える。これなら、なんとか上手くまとめられそうだ。

 そこで幹弥が再び咳をしたので、私の背中に嫌な記憶が蘇る。

「咳、大丈夫?」

「ああ。べつに、たいしたことない」

 素っ気なく返されたけれど、喉元をかすかに抑えた彼に私はつい食ってかかる。

「調子悪いなら、ちゃんと病院行かないと駄目だよ」

「そこまでじゃない」 

 鬱陶しそうに返され、私もここで終わればよかった。それなのに、あまりにも取り合わない幹弥に私はさらに続ける。

「でも、咳だからって甘く見てたら」

「小さな親切、大きなお世話だよ」

 冷たい口調で、ぴしゃりと跳ねのけられ、さすがに口をつぐむ。そして気まずい沈黙が流れ、私うつむくと小さく「ごめん」と謝罪した。

「高校のとき、担任の先生を亡くしたんだけど、先生はずっと咳をしてたから……」

 直接の関係はわからない。でも現代社会が担当の先生はいつもパワフルで、クラス想いで、みんなに慕われていた。ずっと風邪みたいな症状が続いていたのは知っていたけれど、でもまさか亡くなるなんて。
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