クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
 言い訳めいたものを口にして、少し後悔する。この話は必要ない。そう思ったのにふと頭に温もりを感じた。

「心配しなくても、俺は大丈夫だから」

 先ほどとは違って、どこか申し訳なさそうな声。優しく頭を撫でられてさっきとは違う意味で胸が苦しくなった。

「……うん。余計なことをごめんね」

 そこで、どうしてか口が滑った。

「私、先生が亡くなったって聞かされて、みんな……とくに女子は泣く子が多かったのに、なぜか全然泣けなかったんだよね。悲しいし、つらかったのに……自分でも冷たい生徒だと思う」

 なんで幹弥に話したのか。責めて欲しいのか、励まして欲しいのか。でも一馬に言われた通り、私はきっと冷たいんだと思う。

「泣くだけが、悲しんでるってことじゃないだろ。それに冷たい人間なら、咳をしている俺のこともほうっておくと思うけど?」

 私に触れながらも、幹弥はなんでもないかのように言った。変に慰めようとか、憐れんでいるのとかなくて、そのことが余計に胸に染みる。

「っ、大きなお世話だって言ったくせに」

「悪かったよ」

 あっさり謝られて、調子が狂う。どうしよう。

「……それにしても、俺に世話かけさせるなんて、なかなか高いよ?」

 彼の手が離れ、空気を変えるように話を振られたので私は思わず顔を上げた。すると背もたれに肘をついて顔を預けた幹弥が笑っている。

 すぐにレポートの件だと気づき、お礼を言おうとする。けれど、いきなりこんな言い方をされると、どうも素直になれない。
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