クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
 来客用駐車スペースに車が停まったのを確認し、私はシートベルトをはずす。車のデジタル時計に目をやれば、もうすぐ日付が変わろうとしていた。

「ありがとう」

 短くお礼を告げると、幹弥がなにかを思い出したように「そういえば」と話題を振ってきた。

「弘瀬(ひろせ)先生にも話したんだけど、次はプロジェクターを使いたいんだ」

「わかった。覚えてれば用意しておく」

 端的に答えると幹弥はハンドルに腕を預けて苦笑した。

「覚えといてよ。あと、マイクの調子が、あまりよくなかったから、そろそろ電池が切れか、故障気味なのかも」

 そこで、私はふうーっと長く息を吐いて軽く項垂れた。そしておもむろに彼の方に顔を向ける。

「あのね、そういうことは仕事中に言ってくれない?」 

「言いそびれてたんだよ。事務に顔を出したとき、優姫はいなかったし」

「ほかの人に言えばいいでしょ」

 しれっと返され、私は不満げに物申す。私は彼の秘書でもなんでもない。今の内容ならほかの人間でも事足りるはずだ。

「みんな忙しそうだったからね」

「幹弥が話しかけたら、誰かしら手を止めると思うけど?」

 むしろ彼と話したがってる同僚は多いし、後輩の女子は「ぜひ、お近づきになりたい」と話してた。
< 8 / 129 >

この作品をシェア

pagetop