過保護な御曹司とスイートライフ


「これ、なーんだ」
「チョコですね」
「そう。合コンではこんなサイズ感のお菓子を使って盛り上がる遊びがあるんだよ。これを口に挟んで、隣の人に渡していくってゲーム」

「へぇ……口に……」と繰り返しながら、その様子を頭の中に思い浮かべる。
口に挟んだチョコを、隣の人に……え。隣の人に?

「え……まさか、相手の口にってこと……?」

こんな小さなチョコを隣の人にって、だってそれって……とうまく情報処理ができないでいると、慶介さんが説明してくれる。

「そう。まぁ、普通はグミとかそういうのだったり、ポッキーだったりするけど……ま、いっか。ほら、これくわえてて。食べないでね」

ポカンと開けたままになっていた口に、チョコを押し付けられくわえさせられる。
言われるままそうしていると、慶介さんはニコッと笑い「じゃ、いくよー」と顔を近づけてくるから、ハッとして焦ってしまう。

明るい雰囲気だし、下心とか他意はないんだろう。ただ、なにも知らない私に、教えてくれようとしているだけで……だから、嫌がるのは失礼だ。

それにこれは、合コンの場で普通に催されているゲーム。みんなが平気でしていることなんだから、私だってこれくらい……っ。

そう意気込み、ギュッと目をつぶる。……けれど、近づいてくる気配に耐えきれなくなって、慶介さんの胸を押し返す。

「ん? なになに?」

笑顔で聞かれたところで、口にチョコを挟んだままじゃ答えられない。

じっと見て首を振って見せると、慶介さんは「ほら、大人しくしてなきゃダメだよー」と軽いトーンで言い、私の手を片手で拘束してしまう。

さっきまで子犬タイプだとか思っていたのに、手首を掴む力の強さにそんな考えは消え、頭の中は怖さで一色になった。
こんな簡単に押さえこまれてしまうことも、力の差も怖い。

「や……っ」

笑みを浮かべたままの慶介さんがゆっくりと近づく。逃げることもできないまま、ただ、慶介さんの唇がわずかに開いた様子を見ていることしかできずにいた時。



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