過保護な御曹司とスイートライフ
「――おまえ、なにしてんの?」
そんな声が部屋に落ちた。
ハッとして見れば、カウンターを挟んだ向こう側、リビングに立つ成宮さんがいて……不機嫌そうに眉を寄せこちらを見ていた。
思わず口の中に含んでしまったチョコが舌の上でじわりと溶ける。
さっきの声……成宮さんにしては、低く怖かった気がしたけど……気のせいだろうか。
そんな風に考えていると、私の手を離した慶介さんが明るい声で言う。
「あ。アッキーおかえりー。いや、鈴村さんがあまりに男女の戯れ方を知らないから教えてあげようかなーって……いてっ」
キッチンまでやってきた成宮さんが、慶介さんのお尻のあたりを膝蹴りする。
「こいつにはそういうの必要ねーんだよ。……で、慶介はなんの用で来たんだ?」
その声はまだわずかに不満そうだったけれど、表情はいつもの成宮さんだった。
「おかえりなさい」と声をかけると「おう」と笑顔を返されてホッと胸を撫で下ろす。
さっき違って見えたのは気のせいだったのかもしれない。
「俺は、母さんに頼まれて差し入れ持ってきただけ。キウイとチョコね。で、あとこれ」
そう説明した慶介さんが、ポケットから取り出した携帯を成宮さんに見せる。
「立食パーティー……ああ、近藤建設のか。パス」
さっと見てそう判断した成宮さんに、慶介さんは「えー」と苦笑いをこぼす。
「まぁ、そうかなとは思ったけど。あそこの娘さん、明らかにアッキー狙いだもんねー。アッキー、女で面倒くさいことになるの嫌いだし、仕方ないか」
まるで過去になにかあったような言い方をされて気になっていると。
「あ。やべ、父さんから呼び出し入ってた」
携帯を見て焦りだした慶介さんが、急いでリビングから出ていく。