求めよ、さらば与えられん
抱きしめる腕は優しく、温かかった。震えてる……?私の気のせいかもしれない。だけど何かしてあげたくて、私もジーン王子の背中に腕を回した。



「お前は本当に鈍臭い」



……え?



「密猟者に捕らわれる人間など聞いた事がない」

「……馬鹿にして__」

「あまり心配させるな」



一瞬ギュッと抱きしめられ、直ぐに体が離れた。



「どうした?」



咄嗟に伸ばした手は彼の手を握りしめていた。大きく温かい手。その手を離す事が出来なかった。



「あり、がと……助けに、来てくれて……ありがとう__っ」



涙が溢れた。安心しきっているせいで、中々涙が止まらない。ジーン王子は何を言うでもなく、手を握ったまま私が泣き止むのをただ静かに待っていてくれた。


泣きながら鼻をすするのは案外体力を使うもので、涙が止まった頃にはどっと疲れていた。鼻水も止まったけど、鼻が詰まって息苦しい。そして泣きすぎたせいで頭がぼーっとする。



「……動物たちは?」

「森に帰した」

「そう…良かった」



みんな無事に帰れたんだ。本当に良かった。



「近頃森が荒らされているという情報は入っていたんだが、中々犯人を捕えられずにいた。 お前が危ない目に遭ったのは我々の責任だ。 悪かった」




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