求めよ、さらば与えられん
私は重症患者の手当にあたった。


救護所は他のところよりも強い結界を張っているらしく、攻撃の影響を受けづらくなっているようだ。


薬では追いつかない患者に力を使っていたら、胸にドクン_と大きな脈が走った。体から力が抜けていく。立っていられず崩れ落ちるように地面に座り込んだ。



「ベアトリーチェ!!」



心配するアウロラに顔を覗き込まれ咄嗟に笑った。ここ最近は条件反射のように笑うことが癖になっている。



「風の妖精さんは?」

「手を貸してくれたお陰で今は結界の強度が安定しておる」

「そっか、良かった」



アウロラの両手が私の頬を包み込んだ。辛そうに涙を流すアウロラを抱きしめた。抱きしめてるつもりで抱きしめられていないかもしれない。だって、思うように体に力が入らない。


どんどん怪我人が運び込まれてくる。それなのに私の体はどんどん使い物にならなくなっていく。



「ベアトリーチェ、少し休みなさい」



そう声を掛けて下さったのは国王陛下だった。アウロラと同じように心配そうな顔をしている。その顔がパパの顔と重なった。


私は首を横に振った。休んだところで私の体はきっとたいして回復しない。それなら命あるうちにやれる事をやっておきたい。



「もう、終わりなの?」



この場にそぐわない程落ち着き払っている声色。振り向かなくてもそれが誰なのかすぐに分かった。



「エデ伯母さま……」



こんな時でもエデ伯母さまの恐ろしく美しく
妖艶な微笑みは健在だった。





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