求めよ、さらば与えられん
すぐ側に感じるアウロラの殺気。



「パメラ、ここで何をしている。 中に避難していなさい」



パメラ王妃の正体を知らない国王陛下は気遣うような声をもらした。


何も知らなければただただ美しい王妃様。その中に恐ろしい程の闇を飼っているなどとは誰も思わないだろう。



「何かご用ですか? 母様」



クリストフが私を庇うようにエデ伯母さまと私の間に立った。


ふともう一つの殺気に気が付いた。視線を向けるとルネ王子が冷たい目でエデ伯母さまを見ていた。鋭く射抜くような視線。初めて見るルネ王子の表情。



「戦よりもベアトリーチェの命の方が先に尽きてしまいそうだったから、お見送りに来てあげたのよ?」



笑顔の奥の瞳は少しも笑っていない。狂気を感じさせる。この人はいつからこれ程までに狂ってしまったんだろう。止める事は出来なかったんだろうか?



「お見送りだなんて……優しいんだね、でも残念ながら私はまだ死なないよ……エデ伯母さま」



私の嫌味なんて少しの意味も持たないとでも言いたげに、エデ伯母さまは声高らかに笑い始めた。



「エデ伯母さま? ベアトリーチェ、何を言っているんだ」



眉を寄せる国王陛下と目があった。困惑した表情なんて普段は見せない国王陛下。けど今は違う。


困惑しているのは国王陛下だけじゃない。私の言葉を聞いた人たちみんなが同じ様な顔をしている。





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