王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~


王城の三階は主に王家の人間のための居住空間にあたる。
そして三階にあるテラスには、外に置くにはもったいないほどしっかりしたテーブルが持ち込まれていて、その上には可愛らしく飾られた花かごや、おいしそうなお菓子が並んでいる。


「王太子様、今日はいいお天気ですわね」


シャーリーンはご機嫌だった。
なんと言っても、国王直々に、ギルバートとの茶会の誘いが来たのだ。
三階にあがるのはシャーリーンも初めてのことで、それだけでも特別になった気がして気分が高揚してくる。


「ああ」


ギルバートは頬杖をついたままぼうっとしている。シャーリーンに対する興味はなさそうだ。


「今日は私が、特製のお茶をお入れしますわね」


今日のために、お茶の入れ方を侍女から習ってきた。そこに、エマのところから奪ってきた惚れ薬を一滴。これで、王太子の心は、シャーリーンのものとなる。


シャーリーンは、初めて社交界デビューをした十六歳のときに、ギルバートに一目ぼれしていた。
美しい金髪と、快晴の空のような碧眼。逞しく、力強い体。いつもどこか遠くを見つめ、男性同士で集まり楽しそうに語り合う。女性を口説くのは苦手のようで、ダンスは一曲は付き合ってくれても二度目の誘いはかけてくれない。

理想の王子さまである彼の妻になれるなら、とシャーリーンは一心に自分を磨いてきた。

お陰で、彼女の美しさは多くの人に知られることとなる。シャーリーンに張り合えるのはヴァレリアくらいだと言われたものだ。

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