王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
牢番は、そこの一番奥の牢までエマを連れてきた。
牢と言っても、王城にあるのは留置場のようなもので、本当の囚人は別に建てられた幽閉塔に閉じ込められる。
ここにいるのは、罪を確定される前の人間で、女性側の牢にはエマしかいないようだ。
牢の中は些末なベッドと薄い毛布のみ。牢番は鍵を開け、そこにエマを入れた。
「……本当に飲ませたのか?」
牢番の問いかけに、エマは苦笑して首を振る。
「飲ませたのは私じゃありません。でも作ったのは本当ですから」
「そうか」
牢番はそのまま鍵を閉めて戻っていく。エマは石がむき出しになった床の上で身震いをした。
(……寒い)
ベッドの上に置かれた毛布を体に巻きつけても、底冷えする寒さは変わらない。
ひとつくしゃみをしたところで、再び牢番が顔を出した。
「寒いだろう。ほら、今余っている毛布全部持ってきた。床じゃなくてベッドに座ったほうがいいよ。明かりも暗いだろ? ランプももう一つ持ってきた」
「え?」
「俺、君が悪いことするなんて思えないんだよ。俺が風邪ひいて薬を買いに行ったとき、親身になって話を聞いてくれたよな。子供にも飲ませたいって言ったら、子供と大人の量は違うから間違えないようにってきつく言ってたじゃないか。冤罪ならじきに晴れるよ。風邪ひいちゃ大変だ」
「……ありがとう……ございます」
「アンタの薬でさ、俺も子供たちもすぐ良くなったよ。王城に薬屋がなくなってがっかりしてたけど、城下町にも店があるって聞いたから、今度はそっちに行くな」
「はい。ぜひ」
男はにっこりと笑うと、エマに毛布を押しつけ、また戻っていく。