王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
(……信じてくれた)
エマの胸がほっこりと温かくなる。城にいたのはほんのひと月ほどだ。それでも、その間にエマの薬室にはたくさんの客が来た。そしてその中の一部の人たちは、こうしてエマのことを信じてくれるのだ。
(嬉しい)
ベッドの上で膝を抱えたまま、肩から毛布をかぶってみる。一階と地下はこんなに冷え込み方が違うのかと思うくらい寒かった。毛布をかぶっていてさえ、体がカタカタと震える。
(これから、どうなるのかしら)
不安で涙が出そうになる。けれど沙汰を待つしかないのだ。エマは薬を作ってしまった罪を償いたいのだから。
そのままじっとしてしばらくたったころ、不意に牢番の詰め所あたりが騒がしくなる。
「ここからは牢です。王太子様のお入りになるところじゃありません」
牢番の声に、エマは驚いて顔を上げた。ギルバートがこんなところにまで来たというのか。王太子が、ただの薬屋のために?
「いいから、通せ。先ほど連れられてきた娘がいただろう。どこに入った?」
「ああ、エマさんですか」
「冤罪だよ。晴らしてやりたいんだが父上が納得してくれない。……不安がって泣いてないか?」
「それは大丈夫です」
声が近づいてくる。エマは信じられない思いで柵に近寄った。
「……ギル」
「エマ! 大丈夫か?」
エマの姿を見つけて、ギルバートとセオドアが駆けてくる。
ギルバートは柵に捕まるエマの手に、自らの掌を重ね、顔を近づける。