王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
「たしかに俺がおかしくなったのは君の薬のせいなんだろうな」
「王子?」
突然、ギルがエマの言うことを肯定し始めたので、セオドアが驚く。エマもぱちくりと目を見ひらいた。
「だが、君は俺を目覚めさせた。薬を作った罪はそれでチャラになると思わないか?」
「……ギル」
エマの罪を認めた上で、もう贖罪は済んだと言ってくれているのだ。
ギルバートのその言葉は、エマの胸につかえていた罪悪感を振り落としてくれた。
「そうなれば君がここに捕まっている理由はないだろ? 俺は父上を説得して必ず君をここから出してやる。少しの間辛抱してくれるか?」
「ギル……」
「俺を信じて、エマ」
柵越しに近づくギルの顔。エマの瞳からは安堵の涙がこぼれ、柵におでこを押し当てるようにして彼に応える。
あと少しで、ふたりの唇が重なるところで、セオドアが「ゴホン」と咳払いをした。
そのとたん、エマは我に返って柵から離れる。
(そ、そ、そうだ。ふたりきりじゃない!)
「……お前、空気を読め」
思い切り不機嫌そうに睨むギルに、顔を赤らめたセオドアもバツが悪そうだ。
「流石にこんなところでいちゃつくのはやめてください。それより早くエマが釈放されるように動かないと」
「分かっている。牢番! エマを丁重に扱えよ。彼女に何かあったら、お前を処罰するからな!」
「はいいぃ!」
悲鳴のような声を上げる牢番に、エマは思わず笑ってしまう。
ギルバートが来てくれたおかげで、先ほどまでの心細い気分が晴れていく。気を取り直してベッドに腰かけたエマは、窓がないこの地下の牢獄を見てため息をつく。
(ここじゃ、バームにも会えない。……寂しいな)
今までは何があってもバームが傍にいてくれた。それだけで、助けられていたんだとエマは改めて実感する。
エマはベッドの上で毛布にくるまり、これから尋問されるであろうシャーリーンのことを思った。