王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~


 何もしない時間というのは長く感じるものだ。
いつも、薬を作ったり売り子をしたりと慌ただしく生活していたエマには、途方もなく長い時間だった。

途中、夕飯だと牢番が食事を持ってきてくれて、そのときに牢番のふたりの子供の話を聞いた。
やんちゃで怪我ばかりしてくる長男と、体が弱く寝込みがちな次男の話だ。エマが喉によく効くハーブティのレシピを教えると、牢番は慌ててメモを取る。


「自分でできなかったら店に行くな」

「ええ。私がいなくても、妹か母が対応してくれるはずです」

「アンタはこんな時でも人に優しく出来るんだな。……本当にいい子だなぁ。早く出してやりたいよ」


食べ終わった食事は牢番が片付け、エマは再び独りぼっちになる。
寒いと思うのになぜか眠くなり、ベッドの中で丸まっているといつの間にか寝ていた。気が付いたのは物音でだ。


「いけません、殿下」

「どうしてだ。彼女を牢からは出さない。父上が望む要件は満たしているだろう」

「ですが」

「いいからお前は何食わぬ顔で番をしていろ。リアンが来ても取り次ぐなよ」

「無理です」

「セオドアのところに行ったと言っておけ」


話声で目を覚まし、そこにギルバートの姿を見つけてエマは目を丸くする。


「ほら、鍵を出せ」

「はい」


脅された風の牢番は、腰をかがめて牢に入るギルバートの背中に念を押すように告げた。


「……間違っても、ここでお戯れはおやめくださいね?」

「こんな状況でそんなことするか。いいからお前は戻ってろ」


しっしっ、と手を振られ、牢番が渋々と定位置へと戻っていく。
エマはそれが本当にギルバートなのか信じられなくて瞬きを三度した。

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