王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~

「……離して」


拗ねたような甘えたような、感情の入り混じったエマの声が、ギルバートの胸を打つ。


「嫌だ。俺はもう君を離したくない。エマ。一度忘れてしまっておいて、信じてもらえないかもしれないけど、俺は君に、恋をしているんだ。それこそ、初めて城下町で出会ったときから。……俺は王子で、結婚は俺の個人のものではありえない。どうしたって国への利益を考えなければならない。ずっとそう思っていて、だからこそ君に嘘もついた。だけど、そんな迷いも、もう捨てた。俺は自分の好きな人を妻にして、それでも国を栄えさせる」

「ギル……」

「君は危険を冒しても俺を救いに来てくれる、勇気と愛情のある人だ。王妃にふさわしくないという人がいても、俺は自信を持って言える。エマは、誰よりも俺の妃にふさわしいんだと」


エマの瞳から、ぼたぼたときらめく滴が落ちていく。


「エマ、泣いてる」

「だって、嬉しいんだもの。あなたの言葉が、嬉しい。でも自信なんてない。私はただの薬屋で、何の身分もない。あなたの妃にふさわしいなんて、誰も思わないわ」

「そう思うなら、君は自分のことをよくわかっていないんだ」


そう言うと、ギルバートはポケットから、分厚く、幾重にも布で包まれた塊を取り出した。


「これは?」

「ヴァレリア殿から、エマへと預かって来たんだ。焼いた石が入っている、即席の暖房器具らしい。熱いから直に触ってはいけないそうだよ。ベッドの足元付近に入れるといいそうだ。女性に冷えは大敵だからとね」

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