王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
「ヴァレリア様が?」
「君のことを心配している。流石は女性の気遣いだなと感心したよ。ヴァレリア殿にこんな一面があるとは、俺も知らなかった。以前の彼女だったら、自分から俺に話しかけることもなかったんだ。……彼女を変えたのは君だね」
「私?」
「ああ。ヴァレリア殿だけじゃない。城に住まう多くの人が、今回の騒動を聞いて、君が捕らえられたのは間違いだ、と訴えているんだ。納得していないのはわからずやの父上と一部の貴族だけだよ」
「そうなの?」
てっきり、みんなから恐ろしい薬を作る魔女だと思われ、嫌われてしまっただろうと思っていた。信じてくれたのが、牢番の彼だけじゃなかったことに、驚きとともに嬉しさが沸き上がる。
ギルはエマを抱きしめる腕に力を込めた。
「君はここにいたたったひと月ほどの間に、凄い人数の味方を作ったんだな。しかも、その人たちの身分が多岐にわたる。騎士団員、使用人、そして貴族だ。なあエマ、これって凄いことだろ? 何の身分もないただの薬屋のエマが、こんなに人から愛され信用されるんだぜ? 人に愛され、人を助けることができる。それが俺が妃に求める要件だ。身分なんかより、ずっとずっと大切なこと。君はそれを持っている持っている人なんだよ。だから俺は君がいい。君じゃなきゃダメなんだ。……頼むエマ。俺の妃になると誓ってくれないか」
「ギル……」
エマは胸の奥が熱くなる。身分も関係なく、ギルバートがエマ自身を見てくれているのが分かるから。
だけどそれでも踏ん切りがつかないのは、秘密があるからだ。エマはギルバートにすべてをさらけ出しているわけじゃない。