王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
国王が追い払うように手を振ると、「今のもめ事を解決する一助になると思ったから今来たのですよ」とデイモンは早口で続けた。
「要は、エマの実家に王家に嫁いでも障りないくらいの家柄なり金銭があればいいのでしょう。今更血筋はどうすることもできませんが、家の格ということであればなんとかなります」
「どういうことですか?」
「僭越ながら、国王は我がメイスン商会を、国にとってどの程度の立場だとお考えですか?」
「メイスン商会の納税額は高額だな。国には貢献していると思っておる。他国からの認知度が高いのも特徴だな」
「さすが国王様。正しく理解しておられる。加えて、昨日の商人ギルドを認めていただければ、その業績はもっと伸ばすことができると考えております」
「うむ」
「……その商人ギルトの長を、私はエマの父親のジョンに任せようと思っております」
「えっ?」
目を剥いたのはギルバートだ。国王も口を半開きにして見つめる。
デイモンはふっと微笑み、続ける。
「グリーンリーフはそもそもメイスン商会から派生して生まれた薬屋なのです。ですから、ジョンもエマも私の一族のひとりです。……私はこの通りいい年で、私の愚息はノーベリー伯爵家の執事として働くことを至上の喜びとしていて、事業を継ぐ気はないようです。ですから、新しいこの商人ギルドを支えていくものを我が一族の中から選ばねばならないのです。ジョンは城下町といういい立地に店を構えておりますから、商売人たちの情報も得やすい。よって商人ギルドの初代の長には、ジョンを選ぶつもりです。……商人ギルドが成功すれば、数年で貴族を黙らせるほどの家柄になりますぞ」