王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
「……お」
「本当か?」
「ええ。ですから。まずは商人ギルド設立の許可を。国王の認可があるのとないのでは、海外での信用度が変わりますからな」
「父上。……いい話ではありませんか。お願いします」
ギルバートを味方につけ、デイモンは勝ち誇ったように笑う。
謁見室の入口で、事の次第を心配して息をつめて見守っている使用人たちも、期待のまなざしを向けている。
国王はついに観念した。
エマという何の身分も持たない少女が、これだけの人間の心を動かしたのは、間違いのない事実なのだ。
「わかった。……地下牢からエマ嬢を釈放してここに連れてこい。商人ギルトについてはここで答えは出せない。財務官とも相談せねばならないし、貴族議会を無視するわけにもいかん。ただ、前向きに検討することだけは約束しよう。それと、……シャーリーン殿は王子に薬を盛った罪で裁こう。キンバリー伯爵も監督不行き届きで謹慎だ。後で沙汰を伝えに行くから、別室に控えさせておけ」
「父上、ありがとうございます!」
「だがいいか、ギルバート。変わり種の妃を貰えば、何らかの嫌がらせはある。お前は国と妃、どちらも守らねばならんのだぞ。その覚悟があると信じていいのだな?」
「もちろんです! エマと一緒なら、俺はきっとどこまでも頑張れます」
「わかった。……廊下にいる者たちは下がれ、さっさと仕事に戻るのだ!」
国王の一喝に、様子をうかがっていた使用人たちは蜘蛛の子を散らすように持ち場へと戻っていく。