王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~


 それから、エマはギルバートの部屋に連れていかれた。
昨日も入った部屋だが、そのときは中をゆっくり見る余裕はなかった。
城下町にあるグリーンリーフの店舗部分よりも広い部屋に、ベッドと書棚、暖炉に物書き机とソファが置かれていて、続き間への扉もある。

ギルバートはエマをソファに座らせると、釈放に至った一部始終を聞かせた。


「そっか。みんなが助けてくれたんですね」


エマが嬉しそうに微笑むと、ギルバートは不満そうに眉を顰める。


「……なんで丁寧語なんだ? よそよそしい」

「だって。王子様と話すのに礼儀は大切でしょう?」

「外ではな。ふたりきりのときにそんな気遣いはいらない。今まで通りにしてくれ」

「そうなの?」


エマは小首を傾げる。


「私、なんにも分からないんだもの。本当にあなたの傍にいて大丈夫なのかしら」

「そうだな。生まれてきた環境が違い過ぎる。多分俺たちの間では常識も違うんだろうな。だから言葉にすることが大切なんだと思う。エマは俺になんでも聞いてよ。俺も分からないことは全部君に聞く」

「そうね。……じゃあさっそくだけど、私はこれからどうすればいいの?」

「城に部屋を用意するからそこに入ってもらう。ああ、あとでご両親が来ることになっているから正式な話をしよう。しばらくは城に慣れることだな。後は君も願ってくれた通り、俺を支える存在であればいい」

「支えるってどうするの?」

「これだけでいいよ」


ギルバートはエマをぎゅっと抱き締めた。
思い切り髪のにおいを吸い込まれ、エマは慌てて離れようとするが、力が強くて抜け出せない。

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