王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~



午後には、エマの両親が城に呼ばれた。
デイモンとクラリスも同席していて、ジョンはギルド長の話と結婚の話と二重の意味で驚かされる。


「俺がギルド長なんて無理だよ、デイモン様」

「情けないことを言うな。お前、娘が可愛いんだろう。少しは力になってやれ」


エマの父のジョンは、のんびりとした人のいい性格だ。実直に決められたことをコツコツをやる性質の持ち主なので、他人からの信頼は厚いが、いわゆる前に立つ性格ではなく、人を切り捨てることが苦手だ。

デイモンとしてはそこを見越してジョンを前にたたせ、実際にはベティに交渉を任せればいいと踏んでいた。
もちろん、メイスン商会自体はギルド構成員の一員として、まだまだ元気なデイモンが仕切るつもりでいる。


「お前は表立って立っているだけでいい。実際に船に乗り、海外と直接取引する人間は別に頼むつもりだ。お前は首都に身を置き、商人ギルドに加わりたいという人間の対応をしてくれればいいのだ」

「それなら何とか……」

「そう。それに、会社というものは携わるもの全員で盛り立てていくものだ。別にジョンの肩にすべてが乗るわけじゃない。ギルド長をお前にするというだけで、俺もまだまだメイスン商会から手を引く気はない。必要なことは俺が教えてやる」

「でも」

「でもじゃない。腹を決めろ。お前に足りないのは度胸だ」


デイモンにやり込められ、ジョンはすっかり小さくなっている。そんな夫に対し、妻のベティはあっさりとしている。

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