王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
「まあなるようにしかならないわよ。諦めなさいよ、ジョン。それより、問題はエマのほうでしょ。王太子妃になるなんて信じられないわ。大丈夫なのかしら」
「それは私も不安」
「大丈夫ですよ。お母上。必要なことはこれから覚えてもらえればいいし、俺はエマの人に愛される性格が、王室を変えてくれると信じています」
貴公子然としたギルバートに微笑まれて、ベティは一気に頬を染める。
そしてギルバートはエマに向きなおると、姫に誓う騎士のようにかしこまって、彼女の手を取った。
「エマもね。慣れないことで不安もたくさんあるかもしれないけれど、必ず守るから」
「うん」
「なんでも言葉にしよう。俺は最初に君に王子だということを明かせなくて、それで君を傷つけてしまった。もうあんなことはしたくない。不安もすべて言葉にして。そうしたら俺は君のために出来る限りのことをする」
一連の出来事があったからか、ギルバートのまなざしには労わりが感じられた。エマの心にある不安の種が、小さくなっていく。
「それって、薬屋がお客様に思うことと一緒ね。すべての不安や不調を言葉にしてくれたら、それを取り除く手伝いができる。私たちがずっと大切にしてきたことよ」
「そうか。じゃあ俺は、君専属の薬になれるだろうか」
「もうなっているわ。ギル。どんな困難もあなたといれば乗り越えられる気がするもの」
気を抜くとすぐふたりの世界を構築してしまうエマとギルバートに、同席しているリアンは呆れたように目をそらす。
「あーはいはい、そういうのはふたりきりの時にやってちょうだい」
遠慮なく茶化すのはベティで、エマとギルバートの顔に一気には朱がさした。