王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
「また王子様は……。エマさん、いい? 男の人と女の人は性質が違います。もちろん王太子様の言うことも一理あるけれど、私だって、エマさんを心配して言っているのよ」
「もちろんよ。感謝してます。ヴァレリア様」
「……だったらそろそろ。その“様”というのはやめてくださらない? ……私たち、お友達でしょう?」
ヴァレリアの顔が真っ赤になる。人形のような彼女の顔は真っ赤になっても可愛らしい。
「ヴァレリアさん……って呼んでもいいの」
「“さん”もいりません。あなたのほうが年上じゃありませんか」
すねたように、ぽつりと言う。
ちらりと後ろにいる侍女を見れば、ニコニコとほほ笑んでいる。
エマはいままでヴァレリアに対して敬意を払っていたことを悪いとは思っていない。だけどその気遣いが、ヴァレリアが気にしていたのだとそこで気が付いた。
「だったら私も、エマって呼んで欲しいわ。ヴァレリア」
ヴァレリアが嬉しそうにほほを染めながら、やっとエマのほうを向いた。
「……エマ。私たち、ずっとお友達でいましょうね」
(うわあ、殺人級に可愛らしいなぁ。セオドア様に見せたかったな。惜しいわ)
令嬢教育は大変だけれど、ヴァレリアがいてくれたおかげで、エマの心はずいぶん救われたものだった。