王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
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一日の終わりは、エマが一番楽しみにしている時間だ。
「ああ疲れた」
執務終わりにギルバートは必ずエマの部屋による。
エマには、マクレガー侯爵家ゆかりの侍女・ニーナがつけられた。侍女は気を利かし、王子がくるとお湯をすぐに沸かしに部屋を出る。
「今日はどのお茶を飲む?」
「そうだな。疲れが取れる甘いのがいいな」
「砂糖を入れろというこ……」
茶葉を選んでいたエマは、ぐいと顎を掴まれギルバートに会話ごと唇を奪われる。
「ん」
「……君が一番甘いからね」
「もうっ。すぐにニーナが戻ってくるわ」
「別にみられても問題ないだろう。君は俺の婚約者だよ、エマ」
国王に認めさせてからこっち、ギルバートは執務時間以外はエマにべったりだ。
「あのう……」
「きゃあ、ニーナ!」
「お湯、ここに置きますわ。後程取りに参りますから置いておいてくださいませ」
「ニーナ、ちが……」
「気を使わせて悪いな、ニーナ」
「もうっ、ギルっ」
ぷんすかとふくれるエマとギルバートがじゃれているうちに、侍女は続き間へと下がってしまう。
「仲良くやっているようじゃないか。ニーナとは」
「ヴァレリアが選んでくれたの。彼女のお母さまが住み込みで屋敷で働いていたらしくて、目端が利くから上流階級のことが分からない私にはちょうどいいはずって」
「ヴァレリア殿ともすっかり仲良しなんだな」
「ええ。ヴァレリアがいてくれて、私、とても助かっているの」
エマは話しながら、ハーブティを入れる。