王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
だから、正直、エマが王城で暮らすのは気に食わない。
衛兵は、僕を見るとすぐ追い払おうとするし、エマと一緒の部屋にいるのがばれると、侍女が奇声を上げる。
僕ら、ずっと一緒だったんだぜ?
結婚したから離れろって言われたって無理だよ。夫は夫。僕は僕だろ?
そこらへん、ちゃんと理解してくれないと困るんだよな。
加えて気に入らないのが、ギルバートがやたらに僕をなつかせようとしてくるところだ。
今も、僕に気づいて、窓を開けて手を伸ばしてきた。
「バーム。こっちだこっち」
「クルックルッ」
なんだよ。僕はエマの使い魔なんだからな。お前の指図は受けないぞ。
「うーん。言葉が通じてないのかなぁ。でもエマ以外の人間の声も聞こえてはいるんだろう?」
不満そうに唇を尖らせるギルバートに、エマが笑いかける。
「バームは人間の言葉を理解してるわ。でもバームの声を聴けるのは私だけよ」
そうだ。僕とエマは特別なんだぞ。お前の入る余地なんてないんだからな。
「鷹匠ともまた違うんだろ? 会話が通じるなんていいな。俺にもそんな相手がいればいいのに」
新しい玩具に寄り付く子供のように、ギルバートは僕をてなづけようとする。
ふん。マグパイにだってプライドがあるんだよ。自分が認めた奴の言うことしか聞かないに決まっているだろう。
ひとしきりギルバートの言葉を無視していたら、奴も諦めたらしい。葉擦れの音に紛れて、エマに向けられた声が僕の耳に届く。