王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~


 毎日、僕は城の周りをパトロールする。そして、エマの部屋の窓が空いているのに気づいて覗いてみると、今日は薬作りをしていた。

「エマ、何作っているんだ?」

「きゃっ、びっくりした、バームか。……栄養剤よ。夜会があるから、皆さん準備で大変そうだし」

「夜会ねぇ。人間ってのは昼も夜も動くのが好きだねぇ」

特にこの国の王様は大好きだ。何かがあるとすぐに夜会って言いやがる。
鳥の種類にもよると思うけど、僕は夜は巣でおとなしくするタイプの鳥だ。視界が悪い中飛びまくってもろくなことはない。
だから、夜会は本当に苦手なんだけど、エマが出るというなら見張っててやらなきゃならないだろう。


「ところで、最近あいつを見ないな。ええと、セオドア」

「ああ、第二分団は今遠征に出ているのよ。北の山でがけ崩れ跡が見つかったから調査に行くんですって」

「ふうん。そんな仕事もするのか。ご苦労だな。そういや、最近騎士団に見かけない奴が入ったな」

「あら? そうなの?」

「新参なのかな。騎士団員の服は着てたぞ」

「第二分団がいない分、衛兵が外に補充されているのかも。……あ、そうだ。これ、バームにあげるわ」


エマが差し出したのは、金色のブローチだ。


「気に入ったんでしょう? この間つけていた時にちらちらって見てたなって思っていたのよ」

「い、いいのか?」

「うん。私はほかにも持っているから。バームは私専属の騎士のようなものだもの。……ふふ、勲章の代わりね」


騎士団員には等級に応じた勲章が与えられる。正装の時にしかつけないが、セオドアが第二階級の勲章を付けていたときは、うらやましく思ったものだ。


「エマ王太子妃から与えられる勲章か。悪くないな」

「もう、茶化すのはやめて」

「はは。ありがと」


僕はエマがくれたブローチを咥え、すぐさま巣に持って帰った。
キラキラを集めるのは、僕の趣味だ。銀色のキラキラもあるが、やっぱり金色がきれいだ。

エマがくれた、僕の勲章

そう思うだけで、このキラキラはほかのとは違う輝きを秘めている気がした。
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