王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
「クワッツ」
容赦なく、金髪にくちばしを突き立て、思い切りつついてやる。
「うわっ、いてっ」
痛みという感覚に、音の魔法は弱いらしい。ギルバートは頭を押さえて埋めいたあと、焦点のあった眼で僕を見た。
「……バーム?」
「クワッツ、クワッツ」
何でもいいから早く来いよ。エマのピンチだ。
「何を言って。……待てよ、なんで誰も騒がないんだ? バームが中にいるのに」
いいところに気が付いた。お前はなかなか頭がいいな。
ちらりと視線を送ってから飛ぶと「あ、待てよ」と追いかけてきた。
さっさと来いよ、王子様。
テラスに出ると、間一髪、エマが黒服の男に抱えられているところだった。
「バーム! ギル!」
エマは僕たちを見つけ、大声で叫んだ。
「エマに何をするんだ!」
ギルバートはすぐに駆け出し、邪魔をしようとする吟遊詩人たちをけり倒し、黒服の男にかかっていった。
僕は、近くにいたアンジェロにとびかかり、笛をくちばしで拾い上げ、庭に捨てる。
「バーム、援護を」
分かってるよ!
僕が黒服の男の頭をつつきに行くと、たじろいだその隙を狙って、ギルバートがエマを奪い返す。
いいぞ。やるじゃないか。
ギルバートに抱かれたエマはほっとしたように目を潤ませた。
「無事か」
「体がうまく動かないの」
「わかった。ここでしばらく待ってろ」
ギルバートはエマをテラスの端に座らせて、手を鳴らしながら再び男たちへと向き直る。