王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
「そうですね。城下町の店ではハーブティも売っていますよ。今日はサービスしますね」
「ここに店を開けと言ったのは誰だ?」
「キンバリー伯爵様です。栄養剤が今人気なので、主にそちらを販売しています」
「お茶も売ればいい。だが、ひとりで切り盛りしているのか? ここは騎士団詰め所も近いし、女一人では危ないだろう」
「大丈夫です。騎士様たちは紳士ですもの。危険があったら守ってくださいますわ」
その屈強な男たちが、危ないと言っているのだ。
エマのような年頃の可愛い女の子がひとりでこんな部屋にいるのは、襲ってくれと言っているようなものではないか。
「護衛をつけてやろうか」
「いやだ。薬屋に護衛なんて必要ありません」
「だが。……いや、分かった。なあ、俺は君の茶が気に入ったんだ。金はいくらでも払うから、毎日茶を飲みに来てもいいか?」
「え? でも。ご自分で簡単に入れられますよ。茶葉をお買い上げになります?」
「いや。君の茶がいいんだ」
ギルバートは思わず前のめりになってエマの手を握る。
「え、えと」
エマの頬が赤く染まり、困ったような表情になった途端に、明り取りの窓から「クロッコロ、コロ」と高めの声がした。