王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
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セオドアは武骨な男だ。小さな頃から弟とともに騎士団に見習いとして出入りし、生まれもった大柄な体格と日々の訓練を決して怠らない実直さで、みるみる力をつけていった。
二十五歳という若さで第二分隊の隊長となったのも、彼がそれまで騎士としての訓練にまい進してきたからである。
逆に言えば、セオドアはそれ以外のことが得意ではない。特に恋愛に関しては初心者もいいところだった。
貴族の令嬢からみれば、たくましすぎるセオドアは怖いとさえ思える風貌をしているし、父親であるニューマン男爵も騎士として名をあげた人物であまり社交が得意ではなく、縁談の話も浮上しては消えていくといった状態だった。
だから、セオドア自身、その手の話題にどう対応したらいいか分からない、というのが本音だ。
王太子が庶民の娘に恋をしているとすれば、家臣としても親友としても見過ごすわけにはいかない。
しかし、遊びだというならば、ガミガミ言うのはよくないのだろう。
だが、エマだって通われれば気持ちが傾くかもしれない。なにせギルバートは男から見ても均整の取れた美男子なのだ。
王太子にとっては遊びで済んでも、エマは傷つくだろう。
分かっていて見過ごすのはいかがなものか……