王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
「ヴァレリア殿の恋しい相手というのは一体……」
「セオドア様なんですって」
目の前のヴァレリアはハラハラした様子でギルバートを見つめている。
婚約者候補に他に恋しい相手がいる。ギルバートにとっては好都合だ。これで断る相手がシャーリーンひとりに絞られる。
「へぇ。セオドアか」
「あの、ギル……様、その」
ヴァレリアは気まずそうな表情をしたので、ギルバートは安心させるよう早口で告げた。
「いいじゃないか。お似合いだよ。王太子様は大丈夫。そんなことは気になさらない。君がセオドアを好きだというのなら、俺とエマが協力するよ。なぁ?」
その返答に、エマもヴァレリアも一気に顔を晴れ渡らせた。
「ええ! さすがギルね。頼りになるわ」
「王太子様のことは俺に任せて。彼とは面識があるんだ。ヴァレリア殿を選ばないと約束させよう。それより、セオドアのほうはどうなんだ? 彼にとっては君はかなりの高嶺の花になるはずだが」
「少しお話をしたことはありますの。真面目で私のくだらない話にも真剣に耳を傾けてくれましたわ」
「そうよ。セオドア様もヴァレリア様と話すのが楽しそうでしたし、勇気を出してお気持ちを伝えてみたらいいのでは」
「そうだな。なんならセオドアは俺が呼び出してあげよう」
「本当ですか?」
「ああ。君が幸せになるよう祈っている」
パチリと片目をつぶるギルバートに、ヴァレリアは心底ほっとして、涙ぐんだ。