素直になれない、金曜日


その瞬間、頭のなかによぎったのは数時間前、榎木さんにかけられた言葉。


焦げついて頭から離れてくれなくて。


だけど、私は首を横に振った。




「別に何もないよ」




口角をきゅ、と上げれば、砂川くんは「それならいいけど」と納得してくれたようで。




それ以上は特に会話もなく、ただ黙々と委員の仕事に集中することになった。


私たちの学校の図書室は、月ごとに新しい本を注文して蔵書を増やしていくシステムになっている。

今日はちょうど7月の分の本が届いたところだった。



だから今日の作業は、届いた本をとにかく本棚に並べていくことで。




本を分類しながら無心に本を並べる。

暫くは順調に進んでいたけれど、途中で思わぬ壁にぶつかった。




「……っ」





背伸びしても全然足りない。

さっきから分厚い表紙の歴史小説を片手に、つま先立ちを繰り返しているけれど……。



この図書室では利用者の少ないジャンルの本ほど取りにくい位置に配置されていて、めったに読まれない歴史小説は棚のいちばん高いところに並べることになっている。



なんとかして本棚に入れようと試みているものの、私の身長じゃ到底届きそうもない。



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