素直になれない、金曜日
それでも懲りずに背伸びを続けていると、ぴんと伸ばした腕と脚がプルプルと震えはじめた。
うう……限界、かも。
どうしたものか、と本棚の前で途方に暮れていると。
「えっ」
後ろから誰かが───ううん、砂川くんがひょい、と私の手から本を奪った。
そして、背後からいとも簡単にいちばん高い本棚に収めてしまう。
私はあんなに頑張っても届かなかったのに……。
体格の違いにやっぱり男の子なんだなあ、と妙に意識してしまってどぎまぎしていると砂川くんが私をじっと見つめて。
「届かないときは無理してないで、俺呼んでよ」
ほんとうは、ありがとうと伝えたかった。
なのに、
「……っ、うん」
私は咄嗟に頷くことしかできなかった。
そうしている間に砂川くんは自分の作業に戻ってしまう。
私の中では後悔がむくむくと膨らんでいく。
せっかく助けてくれたのに、お礼のひとつも言えないなんて、本当に自分が嫌になる。
……どうしてそれだけのことが言えないの。
行き場のない自己嫌悪に苛まれて。
はあ、とため息をひとつ。
そこから残りの作業は沈んだ気持ちのまま、なんとか終わらせた。