素直になれない、金曜日



「これも砂川くんが作ったの?」



一学期ももう終盤。

砂川くんと一緒に過ごした時間で、わかってきたことがある。



ひとつは砂川くんは甘いお菓子が好きだということ。

そんな風には見えないから、慣れてきたとはいえ、砂川くんが甘いお菓子を食べていると可愛いなあと微笑ましく思ってしまう。


これが所謂ギャップ、というものなのかな。





そして、もう一つは砂川くんはお菓子作りが得意だということ。


というのも、休みの日に葵依ちゃんの要望でふたりでお菓子を作ったりしているうちに上達したんだと、この前教えてくれた。




砂川くんが頷いた、ということはこのシフォンケーキも砂川くんのお手製だということだ。



砂川くんにこうやってお菓子を貰うのは誕生日以来の、2回目。


彼が作ってくれるお菓子は間違いなく美味しいということが今回で証明された。




ほっぺが落ちそうなくらい美味しいシフォンケーキを頬張りながら、しあわせな気持ちに浸っていると、砂川くんが安心したように頬を緩める。




「どう、少しは元気出た?」


「え……?」


「今日ずっと元気なかったじゃん。桜庭さんが否定したから、最初は気のせいかと思ったけど、本棚の整理してるときも、ずっと落ち込んでるみたいに見えた」





何気なくさらっと言ってのけた砂川くんだけど、私は驚きを隠せない。




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