素直になれない、金曜日
葵依ちゃんのために淹れた、りんごジュースのプラスチックカップだけを片手に、一旦彼女の待つリビングへ戻った。
葵依ちゃんにカップを手渡すと、彼女はふわりと微笑んで。
「ありがとう、おねえちゃん」
嬉しそうに私を見上げる葵依ちゃんに思わず頬を緩める。
葵依ちゃんのその姿が天使すぎて、きゅんとしてしまうのは、もはや不可抗力。
「葵依ちゃん」
「……?」
名前を呼ぶと、不思議そうにこてん、と首を傾げる。
その姿に、またきゅんとしながらも口を開いて。
「あのね、砂川くんの様子を見に、ちょっとだけ上に行ってきてもいい……?」
きょとんとしている葵依ちゃんにそう尋ねると、彼女はあっさりと頷いた。
「あおいもね、おにいが心配だもん」
だけど、また風邪をひくといけないからって傍に行かせてくれなくて、だから代わりに砂川くんのことをみてきてほしい、ってそう言って。
口をちょっと尖らせて、寂しそうな表情を見せる。
物憂げな表情。
いつも通りに振舞ってはいたけれど、やっぱり葵依ちゃんも心の中では心配だったんだよね。
行ってらっしゃい、と葵依ちゃんに見送られてリビングを後にした私は、キッチンにもう一度立ち寄って。
トレイにスポーツドリンクを淹れたグラスと買ってきていた冷却シートを載せて、二階へと向かう階段に足をかけた。