素直になれない、金曜日
「あとは単純に、桜庭さんに風邪、うつしたくない」
眉をきゅ、と寄せて困ったように笑うその表情に、胸がとくりと鳴った。
「だから、さ」
立ち上がって、砂川くんが扉を押し開けた。
その動作は性急に私を部屋から追い出そうとしているようにもとれて。
でも怒っている、とか不機嫌、だとかそういうわけでもなさそうで。
砂川くんの表情から読み取れる感情は強いていえば、葛藤に近い。
「わかった。……ちゃんと温かくして寝てね?」
砂川くんの本当の気持ちまでは汲めないけれど、せっかくの思いを無下にすることなんてできなかった。
念を押すようにそう言うと、砂川くんは少し目を逸らす。
そんな彼の姿に名残惜しさを覚えつつ、砂川くんの部屋を出て、階段を降りて。
そして、葵依ちゃんの待つリビングへと戻った。