素直になれない、金曜日
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七月ももう中旬に差しかかり、日が落ちるのも随分遅くなってきた。

窓からは、ようやく傾きはじめた太陽のオレンジが差し込んでくる。



そして、私の目の前にはコトコトと音を立てるお鍋。




「これで合ってるよね……?」




私はもう一度、ケータイの画面に表示されたレシピを確認して首を傾げた。


料理はできないわけじゃないけれど、普段キッチンに立つことなんてほとんどないから、得意ではないことは確かで。



立ちのぼる湯気をくぐってお鍋の中の様子をみれば。




「……いい匂い」




ふわりと漂った出汁の香りに、思わず笑みが零れた。

これは、もしかしなくても大成功のパターンかも。




とはいえ、今私が作っているのは至ってシンプルな卵粥。しかも簡単スリーステップ。

失敗するほうが難しいかもしれないレベルのものなんだけど、ね。




そろそろ夕飯どき。



『使ってもいい』という砂川くんの言葉に甘えて、図々しくもキッチンをお借りして卵粥を作っているところ。




ついさっきまで葵依ちゃんとふたりで過ごしていたのだけれど、ふと思い当たって。



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