素直になれない、金曜日
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コンコン、とノックして今度は遠慮せずに扉を押し開けた。

二階の左の突き当たり、砂川くんの部屋。




「ん……」




私が部屋に入った途端、薄く瞼を上げた砂川くん。




「桜庭……さん?」

「ごめん、起こしちゃった?」




私のせいで砂川くんが目覚めてしまったのではないかと反省していると、砂川くんは首を横に振った。




「大丈夫。もう結構寝たし、そろそろ起きないと」




ふ、と笑った砂川くん。

私的にはやっぱり、もうちょっとゆっくり休んでほしかったなあ、なんて起こしてしまった私の言えることじゃないけれど。




「それで、桜庭さんは?」

「あ……えっと、」




手元のトレイに視線を落として。

いきなりご飯作ったから持ってきた……なんて言っても引かれないだろうか。


頼んでもないのに、って思われたりしないかな。


さっき葵依ちゃんに、『美味しいよ!』と言ってもらって少しの自信を持ってきたはずだったのに。


いざ砂川くんを目の前にするとためらってしまう。



さっきここに来たときも、風邪をうつしたくないという理由だったかもしれないけど半ば追い出されたような形だったし……。




「ん?」



不思議そうに首を傾げた砂川くん。

はやく答えなきゃ、と焦る気持ちとほんの少しの不安と照れが入り交じって、俯いて自然と上目遣いになってしまう。



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