素直になれない、金曜日
「じゃあ、いただきます」
きちんと手を合わせてから、スプーンを手に取って、お粥を掬おうとする砂川くんの手から────するりとスプーンが滑り落ちた。
ガチャン、と耳につく音がして はっとしたように砂川くんがトレイの上に落ちたスプーンを拾いあげる。
「悪い、なんか上手く力入らなくて」
「っ、大丈夫……?」
砂川くんは大丈夫、と言うようにこくりと頷いたけれど、その様子で大丈夫なわけがないよね。
少し考えて、ふと思いついて。
「砂川くん、それ私に貸してくれないかな」
スプーンを指してそう言うと、砂川くんはきょとんとしながらも私に手渡してくれた。
そして、そのスプーンでお粥を一口分掬って。
「どうぞ、砂川くん」
そのスプーンを砂川くんの口の高さに持ち上げて言うと、戸惑ったように砂川くんが口を開いた。
「これ、どういう状況?」
「砂川くんが思うように力が入らないのなら、私が砂川くんの手の代わりになればいいかなって……」
どうかな、と少し首を傾げると砂川くんは、はー、と大きく息をついて、それからくしゃりと目を細めて笑った。