素直になれない、金曜日
口を開いてなにかを言いかけた砂川くんを遮ったのは。
「ひより」
「っ、恭ちゃん……っ?」
後ろから私の名前を呼んだ、昔からよく知っている声だった。
驚いて振り返れば、恭ちゃんのふわふわパーマのアッシュブラウンの髪の毛が揺れている。
「恭ちゃんも図書委員だったの?」
知らなかった、と呟けば、
恭ちゃんはげんなりとした様子で苦笑した。
「おかげさまでな」
その表情でなんとなく察する。
恭ちゃんはじゃんけんとかクジだとか、運勝負にめっぽう弱い。
きっと、今回もそのどちらかで負けたんだろうな。
去年もそれで図書委員に選出されたらしいから、これで二年連続だ。
「んなことより、帰るぞ」
くい、と顎で図書室の出口のほうを指す。
恭ちゃんが急かすから慌てて鞄を持つべく振り返れば、きょとんとした砂川くんと再び目が合った。
「あ……えっと」