素直になれない、金曜日
「だけど、あいつ、女とほとんど話さないらしい。言い寄ってもスルー、告白してもひとことで斬られるとかって」
「……」
「無愛想で冷たい。どこをどう捉え違えばクールだと騒げるんだか」
呆れたように、ふ、と息をつきながら恭ちゃんは肩を竦めた。
「それでついた称号が “無口の王子様” なんだと」
はじめて聞いた “砂川くん” の話。
曖昧に頷く私の顔を恭ちゃんはぐっと覗き込んで真剣な顔つきで言う。
「おまえ大丈夫か?そんな奴と一緒の当番で」
無理すんなよ、と心配そうに眉を寄せる恭ちゃん。
だけど、私は首を横に振ってみせる。
「大丈夫だよ」
「は?」
「砂川くんは、そんな人じゃないと思う」
「……」
無愛想で冷たくて、無口の王子様?
ううん、きっと。
「きっと、いい人だもん」
「……何を根拠に」
根拠かあ。
根拠なんて、そんなの。
「そんな気がするだけだよ」
「気がするだけってなあ、おまえ……」
呆れたようなジト目で私を見つめる恭ちゃんに微笑む。
わかってるよ、恭ちゃんは私のことを思って言ってくれている。
でも、私は心から思っているんだよ。
「本当に、大丈夫なの」