素直になれない、金曜日


そうだ。
さっき、雨の中を歩いてきたから。



私が持っていた折り畳み傘は、ふたりで入るには小さくて。

砂川くんが持っていた傘も小さかったから、大きな傘に変えることもできず。


だから、葵依ちゃんをできるだけ濡らさないように傘を傾けていたんだけど……。

その代わり、私の左半身は雨にさらされていた。


そのとき濡れた身体が今になって冷えてきているのかもしれない。




「……くしゅっ」




油断していたら、またくしゃみをしてしまった。

うう、本格的に寒くなってきたかも……。


小春たちに気づかれないように、冷たくなった肌をさすりながら身体を震わせていると。




「……桜庭さん」




少し離れた場所で、ひとり座っていた砂川くんが急に私の名前を呼んだ。




「砂川くん?」



どうしたのかな、と首を傾げると、砂川くんがぐっと眉を寄せて。




「制服、着替えてこれば?」

「へ……?」

「そのままだと風邪ひきそう」




私の濡れた左半身のシャツを指差して。

もしかして砂川くん、私が寒そうにしているの、気づいていた……?




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