素直になれない、金曜日
「いいじゃん。かわいい」
「……っ!?」
急に、部屋の温度が跳ね上がったような気がした。
ぼっと火がついたように頬に熱が集中する。
勘違いしているわけじゃない。
ちゃんと、わかっている。
砂川くんが『かわいい』と言ったのは、あくまでも私たち姉妹の名前のこと。
……そんなことくらい考えなくたってわかっているはずなのに、どきどき速くなる鼓動を抑える方法がわからない。
仕方ないよ。
だって、まさか砂川くんの口から “かわいい” なんて単語が飛び出すなんて思わなかったから。
「桜庭さん、やっぱり熱あるんじゃない?」
「えっ?」
「顔、真っ赤」
慌てて首を横にぶんぶんと振った。
「これは熱なんかじゃ……っ」
隠すように、赤く染まった頬を両手のひらで覆った。
顔が赤いのなんて、そんなの、砂川くんが急に “かわいい” とか変なこと言うからだよ。