素直になれない、金曜日
それは、騎士が登場するシーンに差し掛かったとき。
「……おにい」
「え……?」
「おにいに、似てる」
葵依ちゃんにそう言われて、絵本に視線を落とした。
この絵本の騎士は、王子様の金髪とは対比的に黒髪で描かれている。
そんな彼は、意識して見れば、たしかに砂川くんに似ている……?
そう思った瞬間、もうそうとしか見えなくなって。
読み聞かせているのは私なのに、もう何度も読んだ絵本なのに。
騎士が砂川くんにしか見えないせいで、妙にどきどきしてしまう。
お姫さまを助けるシーンなんて、どきどきどころじゃない。
もともと格好いい騎士が、さらに五割増しくらい格好よく見えて────
せっかく、熱くなった顔を冷ましたばかりだというのにまた火照る。
それでもなんとか絵本を読み終えると、満足気な葵依ちゃん。
私はほっと息をついて、砂川くんの方をちらりと見た。
そこには、お絵描きをしながら砂川くんに満面の笑みで話しかける小春と、そんな小春の話を柔らかい笑みを浮かべながら聞く砂川くん。