素直になれない、金曜日


無口だけど、寡黙だけど、砂川くんはやっぱり人思いで温かい人だと思う。


だってくしゃっとした、その柔らかい笑顔がなによりの証拠だよ。



そんな砂川くんは、幼い頃の私のヒーローだった絵本の中の騎士なんかより、ずっとかっこよくて素敵で。


ああ、好きだな、って思った。





「え……?」





思わず、小さな声が漏れる。



“好き” ……?

誰が、誰を……?




私が──── 砂川くんを?





「っ!?」





慌てて、首を横に振った。

違う、違うから。
そういうのじゃ、全然、ないから。



ただ、砂川くんがいい人だと思っただけで……。

“好き” とかそんな名前が付くようなものじゃないから、これは。




頭の中に次々と浮かんでは消えていく必死の弁解に、あとから可笑しくなってくる。

私はなにをこんなにムキになっているんだろうって。





そうしているうちに、腕時計を確認して急に立ち上がった砂川くん。




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