淡雪
 それから二日ほど経ったある日。
 川岸に浪人の死体が転がった。

「殺されたのは、この前の蔵宿師ですよ」

 情報を持ってきたのは良太郎だ。

「肩口から袈裟懸けにばっさり。一太刀ですね。相当な手練れにやられたようです」

 気になって現場を見てきたのだという。
 場所はここからさして遠くもない、稲荷神社を抜けた先の川沿いだったらしい。
 稲荷、と聞き、奈緒の胸が騒いだ。

「小槌屋さんが、やらせたのだろうか?」

「いや、それはないでしょう。蔵宿師など、決まった札差のところばかり行くわけではないですし、いかにも恨みを買ってそうな人だったじゃないですか。他にもいろいろあったんじゃないですか?」

「うむ……。だが気持ちのいいものではないな」

 左衛門が唸り、腕を組む。

「このことが伊田様のお耳に入れば、伊田様もご気分を害されような。我が家のことで殺されたのではないにしても、新たに蔵宿師を手配するにも躊躇なさるだろうし」

「左衛門殿。こう言っては何ですが、新たな借金の申し込みは如何なものかと思います。再三申し上げているように、私は持参金などなくても構いませぬ。何なら奈緒殿身一つで来て頂いてもいいぐらいです」

「う……む……」

 左衛門が、ちらりと奈緒を見た。
 こういう話は聞かせたくないのだろう。
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