今宵は遣らずの雨

あれ以来、民部とは会っていない。

そもそも、下の名すら聞いていなかった。

同じ藩の者であるから、兄や知り合いに(たず)ねれば、民部がだれであるかくらい、すぐにでもわかるはずだ。

だが、そうする気はさらさらなかった。

それに、もう既に他国へ縁組されていることであろう。

所詮、自分とは縁のない相手なのだ。

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