【加筆・修正中】恋した君に愛を乞う
結局、暁斗さんの腕から解放されたのは明け方で、少しうとうとしただけでほとんど眠れなかった私は、寝不足のまま朝を迎えることになっていた。
「おはようございます。美緒さん、昨日はご無事でしたか」
「おはようございます。そんな爽やかに挨拶されても、藤堂さんも共犯だって聞いてますよ」
「そうでしたか。申し訳ありません。ですが私は反対しました。社長がどうしてもとおっしゃるので仕方なく……」
「嘘つけ、お前『はいわかりました、上手くいくといいですね』って言ってただろ」
マンションまで迎えに来てくれた藤堂さん。
爽やかに微笑みながら車のドアを開けてくださるけれど、たぶんこの人もものすごーい裏の顔を持っている気がする。
「本日ですが、佐伯さんは会社へ、社長と私で講演会の打ち合わせ、となっております」
「ああ、そうだ、今日は美緒とは別行動だったね……、ってまだ怒ってるのかい?」
「怒ってません」
怒ってないというのは本当だ。でも不機嫌なのは間違いないと思う。
でもこれは昨日の一件が原因ではなく、暁斗さんが昨日着ていたシャツに口紅が付いていたからだ。
別にそれぐらい、と頭の中ではわかっていても、想像するとどうしてもとモヤモヤしてきて上手く笑えない。
そう、ちゃんとした婚約者になったとはいえ、はっきりとお互いが愛し合っている、というわけではないから。
発展途上の関係に、どこか不安を感じているから余裕が持てないのだ。