浅葱色が愛した嘘
動きやすい、身軽な格好に着替えた桔梗は顔を全体的に布で覆い、
うつむくようにして門の所までやってきた。
『澄朔!ほんにお疲れさんやったな!』
島原まで迎えにきてくれたの監察方の山崎だ。
『あぁ、一日目以降、収穫がなくてすまなかった。』
『何言ってんねや!
たった三日で長州の動きを探れたんは上出来や!』
山崎は嬉しそうに微笑んでいた。
気がつけば、既に島原の門は見えない。
その代わりに
懐かしい道なりが一直線に続いていた。
『そうえばな、澄朔が島原に隊務に行ってる間、沖田さん、めちゃめちゃ機嫌悪かったで?』
『え?』
『澄朔が出てった瞬間からや。
一番隊の隊士たちの稽古は地獄そのものやった。
ありゃ、死人が出てもおかしないで。』
山崎は恐ろしいと言って体を震わせた。
沖田が怒っていた理由はきっと、桔梗が内密だからと言って行き先を教えなかったから。
だから何も知らない沖田は島原で遊女を抱いていたんだ。