浅葱色が愛した嘘




『沖田さん………?』




起きているのかと思った桔梗はとっさに沖田から離れた。








『んっ…スースー』





なんだ、寝てるのか。




しかし、沖田は寝息を立てている。

それはつまり、


沖田が桔梗の夢を見ているという事でもあった。




澄朔ではなく、本当の名前である、桔梗と呼び、

離れないで、と苦しそうに呟く沖田。



彼が今、どんな夢を見ているのかは誰にも分からない。



桔梗はそっと沖田の頬に手を当て、つぶやく_____。





『沖田さん…
私が人間も愛した事自体が罪だ。

どうか、ここ想いは気づかないで。』




人斬りであり、女を捨て修羅の血を選んだ桔梗にとって


募らせたこの恋心は温かく優しいもの。

しかし、桔梗は人間ではない。


人と深く関わった事で生まれた感情。



(刀は返す。

だが、条件としてお前を新撰組の隊士となってもらいたい。)



刀を返す代わりの条件として土方に言われたあの日の言葉。




__あんな条件飲まなきゃよかった。




そうすれば沖田さんと出会う事はなかったのに。


と、運命を少しばかり呪ったりもした。





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