浅葱色が愛した嘘
『きゃっ』
長い廊下を右に曲がろうとした瞬間、
正面から誰かとぶつかった。
桔梗はボーッとしていたせいか
足音も、気配も、何も感じていなかった。
しかもぶつかった相手は
『______沖田さん…』
今一番会いたくない相手でもある
一番隊隊長、沖田総司。
思わず気まづさで目を逸らす。
何を話していいのか、
以前はどうな風に話していたのか。
自然に装う事ができないでいた。
『すまない。
かなり寝坊したみたいだ。』
桔梗は口早にそう伝えると沖田をスッと避け、また歩き出そうとした。
ガッ______。
しかし、沖田はそれを許さない。
『澄朔………』
振り返れば今にも泣きそうなくらいの悲しい目で桔梗を見つめている沖田の姿。
掴まれた手の力は強かったが、
どこか弱々しかった。